AIDMA、AISASだけじゃない購買行動モデルの進化系とは?


購買行動モデルとは
自社の商品やサービスを購入してもらうためには、消費者がその存在を知ってから買うまでいくつかの行動プロセスを経る必要があります。そこには一定の法則に従ったパターン傾向がみられるため、購買行動モデルとして、AIDMA、AISASなど様々な概念が提唱されてきました。
 

購買行動モデルにたくさんの種類がある理由は、時代の変化です。インターネットで消費者がより多くの情報を手にして共有する時代に、テレビCM全盛期の考え方は合わなくなってきたのです。
 

それではこれまでの購買行動モデル変化の歴史を振り返ってみましょう。
 

マス広告時代

インターネットが普及する前の1900年代の消費者は、能動的に情報を取りに行くということはほとんどなく、受動的に企業側が一方的に発信する宣伝を受け取るだけでした。
そのためマス広告と言われる大衆向け広告が絶大な効果を生み、意図的にブームを作りやすい時代でした。
この頃の購買行動モデルはシンプルなものをベースに、いくつかの発展形があります。

AIDA(アイダ)

Attention(注意)
Interest(興味)
Desire(欲求)
Action(行動)
 

AIDAは広告などで商品に目を留め、興味を持ち、欲しいと感じて、購入するという流れで、基本の行動モデルとなります。
テレビショッピングの今から「30分以内の注文でおまけ付き」やスーパーのタイムセールなどはAIDAモデルの売り方といえます。
 

AIDMA(アイドマ)

Attention(注意)
Interest(興味)
Desire(欲求)
Memory(記憶)
Action(行動)
 

AIDAにMemory(記憶)が加わったものがAIDMAです。欲しいと感じたあとすぐに購入せず、あとで購入する場合の流れです。
季節や冠婚葬祭にまつわるものなど、その時が来ないと必要にならないものは、広告などで一旦記憶してもらってから必要になったタイミングで購入してもらうAIDMAモデルの売り方といえます。
 

AIDCA(アイドカ)

Attention(注意)
Interest(興味)
Desire(欲求)
Conviction(確信)
Action(行動)
 

AIDAにConviction(確信)が加わったものがAIDCAです。広告などを見て、いいなぁ欲しいなぁと感じでも、購入に至るまでは何か決め手が必要だろうという考え方です。
LP(ランディングページ)と呼ばれる申込や購入などのアクションに誘導するための縦長のウェブページは、AIDCAモデルに沿って設計されます。
 

AIDCAS(アイドカス)

Attention(注意)
Interest(興味)
Desire(欲求)
Conviction(確信)
Action(行動)
Satisfaction(満足)
 
AIDCAにSatisfaction(満足)が加わったものがAIDCASです。商品を購入した後に顧客満足が得られればリピートや紹介につながるだとうという考え方です。
売り切り型の商品は誇大な謳い文句で煽って購入させる方法もありですが、長期間に渡って顧客とつながるサービスを提供する場合は、コスト以上の付加価値があるかどうかが重要なためAIDCASモデルが想定されます。
 

AMTUL(アムツール)

Aware(認知)
Memory(記憶)
Trial(試用)
Usage(常用)
Loyalty(忠誠)
 
これまでの購買行動モデルを踏まえ、各プロセスを数値目標化できるようにしたものがAMTULです。商品を知って記憶し、サンプルを試してから本購入し、ファンになって定期購入するいう、固定顧客をつくるまでの流れになります。
商品やサービスが多様化して行く中で、いかに継続して自社を選んでもらうかはあらゆるビジネスの命題であり、行きつくゴールは自社のブランド化といえます。
 

インターネット検索時代

インターネットや携帯電話が普及し始めると、消費者は自らが能動的に情報を探すようになりました。
広告はそのきっかけづくりが大きな役割となり、詳しい情報はホームページで発信する形になったことで、2000年以降に新たな購買行動モデルが提唱されるようになりました。

AISAS(アイサス)

Attention(注意)
Interest(興味)
Search(検索)
Action(行動)
Share(共有)
 

AISASはAIDCASの流れに似ています。Conviction(確信)がSearch(検索)に、Satisfaction(満足)がShare(共有)に置き換わっていると考えられます。
消費者は自分で検索した情報だからこそ確信し、満足をするからこそ共有するといえます。
 

AISCEAS(アイシーズ)

Attention(注意)
Interest(興味)
Search(検索)
Comparison(比較)
Examination(検討)
Action(行動)
Share(共有)
 

AISASにComparison(比較)とExamination(検討)が加わったものがAISCEASです。自社の広告をきっかけとして、消費者は同業他社の情報も検索するため、比べられてしまうという流れです。
価格.comのように同じ商品をより安くとなると価格戦争になってしまい企業側が疲弊してしまいますが、性能やサービスでいかに同業他社と差別化を図るかが重要であるといえます。
 

AIDEES(アイデス)

Attention(注意)
Interest(興味)
Desire(欲求)
Experience(体験)
Enthusiasm(熱中)
Share(共有)
 
AIDEESはAIDAとAMTULとAISASが混ざったようなものです。Action(行動)がExperience(体験)に、Loyalty(忠誠)がEnthusiasm(熱中)に置き換わっていると考えられます。
他の購買行動モデルに比べ、より消費者の感情の動きにスポットを当てたモデルです。共有という行動をとるためには、この感情に訴えかける何かが重要であるといえます。
 

ソーシャル共有時代

ソーシャルメディアがより浸透していったことで、消費者間で共有される情報が、購買行動に与える影響も大きくなっていきました。
その流れの中で2010年以降生まれたのが、これまでと全く異なる購買行動モデルです。

AISA(アイサ)

Attention(注意)
Interest(興味)
Social Filter(ソーシャルフィルター)
Action(行動)
 
AIDAやAISASのようなシンプルなモデルですが、Desire(欲求)やSearch(検索)がSocial Filter(ソーシャルフィルター)に置き換わっています。
商品を知って興味を持っても、実際に購入するかどうかは、ソーシャルメディア上での評価に左右されるということです。さらに「インスタ映えするから」というようにソーシャルメディアでシェアすることそのものが購買の目的にもなりつつあります。
 

VISAS(ヴィサス)

Viral(口コミ)
Influence(影響)
Sympaty(共感)
Action(行動)
Share(共有)
 
VISASではスタートが広告ではなく口コミとなりました。他者の口コミ情報に影響され、共感することで購入し、それをまた共有することでループする流れです。
もはやここには企業側の関与はありません。最初の口コミをいかにつくるか、影響力のあるインフルエンサーにタッチできるかが重要であるといえます。
 

SIPS(シップス)

Sympathize(共感)
Identify(確認)
Participate(参加)
Share&Spread(共有と拡散)
 
SIPSではそれぞれの行動の幅が広くなりました。
Sympathize(共感)とIdentify(確認)はいずれも、情報源は企業が発信する広告、消費者が発信する口コミ、第三者が発信する情報メディア・専門メディアなど様々で、その対象は商品内容だけにとどまらず企業姿勢や環境への取り組みまで多岐に渡ります。
Participate(参加)のレベルも、商品購入だけに限らず「いいね」「シェア」「コメント」するだけというものから、積極的な支援活動や株を買うなども含んでいます。
商品の良さだけでなく、消費者から信頼してもらえるような企業姿勢も重要であるといえます。

コンテンツ発見時代

インターネットで膨大な情報があふれる中、消費者は自らが興味のある情報を探して比較検証していくことで、どんどん賢くなっていきました。
そのため今は、売り手の発信したい情報だけではなく、買い手が欲しい情報も発信しないと、消費者に届かない状況となり、コンテンツマーケティングの重要と言われるようになりました。そして2015年以降生まれたのが、さらに進化した購買行動モデルです。

DECAX(デキャックス)

Discovery(発見)
Engage(関係)
Check(確認)
Action(行動)
eXperience(体験と共有)
 

DECAXではスタートが広告でも口コミでもなく、自分自身になりました。自らが抱えている問題の解決方法を探すうちに、商品に巡り合い、それが本当に役に立つのかを確認してから購入するという流れです。
体験と共有は一括りになりました。商品は購入したら終わりではなく、その後の使用感や壊れたときの対応など継続的に体験内容が共有されていくからです。
消費者に有益なコンテンツの発信と、顧客対応の品質向上が重要であるといえます。
 

Dual AISAS(デュアルアイサス)

Dual AISASはInterest(興味)を軸に、購入目的のAISASと拡散目的のAISASが2重構造になったモデルです。
SIPSで見たような消費者と企業の関わり方の多様性に対応した結果といえます。
 

縦軸/購入目的

Attention(注意)
Interest(興味)
Search(検索)
Action(行動)
Share(共有)
 
商品へのInterest(興味)を持った層に対する従来のAISASです。
今は情報の多様化により、スムーズに商品購入にまでつなげることが難しく、注意や興味を持ってもらっても共有だけで終わってしまうことが増えてきました。
 

横軸/拡散目的

Activate(起動)
Interest(興味)
Share(共有)
Accept(受容)
Spread(拡散)
 
プロモーション内容へのInterest(興味)を持った層に対する新しいAISASです。
興味を共有したあとに、それが第三者に受け入れられることで情報は横に拡散していきます。多くの人はそこまでで終わってしまいますが、一部の人が商品自体に興味を持ち「購入目的」に変化します。この変容がActivate(起動)です。
そして改めて購入目的のAttention(注意)から縦軸に進んでいき、最後は購入者としての情報が共有されることで、より購入に近い層で横軸の輪がループします。
拡散されやすいとっかかりと商品自体の魅力の両輪があってこそ成り立つモデルといえます。
拡散だけを狙って変わったプロモーションをしても、中身が伴っていないと悪い噂が広まり、取り返しがつかなくなってしまいますので気を付けましょう。

ネットかリアルかは関係ない

このように時代の流れで変化してきた購買行動モデルですが、インターネットを使っていない実店舗だからと近年のDECAXモデルなどが適さないわけでも、ネット販売だからと従来のAIDAが適さないわけでもありません。
 

「Share(共有)」という概念は、インターネットによって急に出てきたものでしょうか?
そんなことはなく、昔からリアルの社会でも主婦たちの井戸端会議や学校のうわさ話などはありましたよね。
 

インターネットの登場により変わったのは、その拡散力です。
直接会って話をしなくても、知らない人の意見や感想を知ることができるようになり、それをまた誰かに発信することで情報は無限に広がっていきます。
 

自社サービスを一時的なブームで終わらないように末永く愛用してもらうために大事なのは、自社のファンをつくり情報の拡散が途切れないようにすることです。
また拡散する情報は内容のコントロールができないので、根拠のないデマを流されないように自社の公式情報をネット上で整備することも大事です。
 

自社のサービスとお客さんを思い浮かべながら、それぞれの行動プロセスにどんなアプローチが良いのか考えてみてくださいね。