どんな新商品を出したらいいかな?どうやって宣伝したらいいかな?ビジネスの戦略をその場の思い付きだけで進めてしまうと、なかなかうまくいきません。
色々なことを考えなければいけないとわかっていても、どこから手を付けたらいいか?どのように考えればいいのか?と手が止まってしまうかもしれません。
そんな時に役立つのがビジネスフレームワークです。
フレームワークという言葉自体は、枠組みや構造という意味なので、システム開発などでも使われる言葉です。
システム開発の場合のフレームワークは、すべての機能をゼロから構築すると大変なので、よく使われる共通した機能を事前に用意して、簡単に使えるようにオリジナル言語化したりソフトウェア化したりすることを指します。
ビジネスにおいても、誰しもが共通して考えなければいけない理論は、経済学者やマーケティング論者によって、すでに概念化されています。
どんな大企業も小さな個人商店も、扱っている商材は違えど消費行動の原理は同じなので、考え方の枠組みをパターン化してみんなで使おうということです。
それならゼロから考えるよりビジネスフレームワークを使う方が楽だよね!となるのですが、このフレームワークには3C分析、4C分析、4P分析、5F分析、STP分析、SWOT分析など似たような名前ばかりが多く、とってもわかりにくいのです。
そこで何かを考える時の道筋のフローを、「情報収集」「分析」「アイディア」「実行」の4つに分け、それぞれの段階に適したフレームワークとして簡単な内容をご紹介したいと思います。
ビジネスフレームワークは、すでにある目標や課題のためにどうすべきかを検討している場合にも有効ですが、特に「自社ビジネスにおける隠れた課題を発見する」場合に本領を発揮します。
情報収集に必要なフレームワーク
現在の自社を取り巻く状況を把握するために、まず情報を収集します。
この時にフレームワークを用いると、どの目線で、どんな情報を集めれば良いのかがわかりやすいです。
状況収集の段階ではまず、仮説や推論は入れずに事実をデータ化することだけを試みましょう。
3C分析
Customer(顧客)、Competitor(競合他社)、Company(自社)の3つから考える分析方法で、すべての分析の基本となります。
Customer情報
客層や購入状況にアンケートといった顧客の側面と、商圏のターゲット人口やエリア特性といった市場の側面の2つを調査しましょう。
顧客の傾向は自社の中でしかわからないため、実店舗の場合はレジと連動した顧客管理システム(CRM:Customer Relationship Management)の導入などデータ化した方が分析しやすいです。
まずは簡単でもいいので、客層(男女比・年齢)や利用シーン(時間・グループ構成)、購入履歴など日々の状況を記録することから始めましょう。
商圏のデータは総務省や市区町村のホームページから閲覧することができます。業種単位の市場規模などは、業界団体が発表している情報を収集しましょう。
Competitor情報
自社ビジネスの属する業界全体の傾向と、同じターゲット層で戦うライバルの傾向の2つを調査しましょう。
これには「ファイブフォース(5F)分析」というフレームワークが使われます。
自社ビジネスを取り巻く不安要素を「新規参入者の脅威」「代替品の脅威」「同業他社の脅威」「供給業者の脅威」「購買者の脅威」の5つの側面から分析するものです。
また業界といったミクロ情報の他にも、世の中の傾向といったマクロ情報も必要です。
これには、Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)の4つから考える「PEST分析」というフレームワークが使われます。
Company情報
自社の経営資源の実情と、業界における自社の立ち位置の2つを客観的に数値化しましょう。
経営資源は古くからMan(ヒト)、Material(モノ)、Money(カネ)の3Mで示されてきましたが、最近は「情報」と「時間」も足して考えられるようになってきました。
同業他社と同規模の人材・商材・資金を持っていても、スピーディーな情報強者が勝つという意味です。
この5つの観点から自社の強みと弱みを把握しておきましょう。
分析に必要なフレームワーク
3Cそれぞれの目線で情報収集ができても、事実そのままのデータはただの数字にすぎません。
それがなぜ起こっているのかを分析していくことで、存在する問題点と改善すべき問題点が明らかになっていきます。
ロジックツリー
1つの事象に対して疑問を投げかけ、そこから出た複数の答えにからさらに問いを繰り返すという、物事を論理的に掘り下げるための思考方法です。
これにはWhyを繰り返す「原因究明ツリー」、Howを繰り返す「問題解決ツリー」、Whatを繰り返す「要素分解ツリー」の3つがあります。
MECE分析
Mutually Exclusive(互いに重複がない)、Collecticely Exhaustive(全体にモレがない)の頭文字をとった言葉がMECE(ミーシー、ミッシー)です。
これはロジックツリーなどと組み合わせると、分析情報の精度アップに役立ちます。
ロジックツリーでは、答えを思いつくことから不規則に挙げていくため、最後に出てきたすべての要素を見直すと、重複している場合があります。
そこで要素をグループに分けて分類してみると、今度は不足している要素があることがわかる場合があります。
このようにMECE分析を用いると、ダブらずモレなく包括的に事象を捉えることができるので、他の様々なフレームワークと組み合わせてみましょう。
SWOT分析
3C分析の内容を、少し角度を変えて分析する方法がSWOT分析です。
これは内部要因であるStrength(自社の強み)とWeakness(自社の弱み)、外部要因であるOpportunity(機会)とThreat(脅威)の4つに分類して考えます。
分類するだけであれば前項の情報集だけにとどまってしまいますが、ここからそれぞれの組み合わせを考えるクロスSWOT分析をすることで、改善すべき問題点とその解決策を見出すことができます。
・自社の強み×機会=シェア拡大のための施策
・自社の強み×脅威=差別化のための施策
・自社の弱み×機会=機会損失回避のための施策
・自社の弱み×脅威=将来の損失回避のための施策
STP分析
STPは、Segmentation(市場の細分化)、Targeting(ターゲットの決定)、Positioning(自社立ち位置の明確化)の頭文字をとったものです。
SWOT分析が情報から要因や状況を分析する手法であるのに対し、STP分析はその先の自社がどこで勝負するかを明確化するための手法と言えます。
4P分析と4C分析
3C分析と名前は似ていますが関係ありません(笑)。
4Pと4Cはいずれも自社商品やサービスのセールスポイントを分析するための要素で、表裏一体となっています。
まず4Pは売り手目線のアピールで、Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(販促)の4つに分類されます。
ここに4Cという買い手目線のメリット、Customer Value(顧客価値)、Cost(コスト)、Convenience(利便性)、Communication(コミュニケーション)も合わせて想定することで、より顧客に受け入れられやすくなるという理論です。
・自社サービスがどんな顧客価値を与えるのか
・自社サービスの価格は顧客にとってどう感じる価格帯なのか
・自社サービスを提供する手段は顧客にとってどのような利便性があるのか
・自社サービスのプロモーションに顧客はどのように触れるのか
これらをすでに想定している場合は現実とズレがないかを、想定していなかった場合にはサービスの改善点の洗い出しにつなげます。
アイディアに必要なフレームワーク
情報収集と分析から問題点が浮き彫りになってくると、おのずとどこに力をいれるべきかの方向性も見えてくると思います。
この時点でまだ問題点や方向性が見えていない場合は、分析が足りていません。
情報分析をすべて飛ばしてアイディアで勝負すれば大丈夫!と安易に考えるのはやめましょう(笑)
ここで用いられるフレームワークには「マインドマップ」「マンダラート」など、キーワードから思いつくアイディアを自由に発想していくタイプと、「オズボーンのチェックリスト」「形態分析法」「MECE」など、理論的に分類することでアイディアを導き出すタイプがあります。
どちらに偏っても不十分です。まずは自由に発想してからそれを論理的に絞るという手順を踏みましょう。
実行に必要なフレームワーク
ここで用いられるのはPlan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の頭文字をとった「PDCA」です。
これは比較的よく使われているように思いますので、耳にしたこともあるのではないでしょうか。
PDCAには終わりがなく、常に繰り返すべきとされているため「PDCAサイクル」と呼ばれることもあります。
目の前のお客さんを大切に
以上のようにいくつかの代表的なビジネスフレームワークを見てきました。
この他にもマーケティングや経営戦略のためのフレームワークはまだまだあるのですが、たくさんある分析方法をすべて使おうと無理矢理当てはめる必要はありません。
自分のビジネスを考える上で、しっくりくるものを見つけて少しずつ取り入れていきましょう。
データ化することで色々なことが見えてくるようになりますが、それが逆に決め付けや思い込みの原因になってしまう可能性もあります。
理論だけで頭でっかちにならないように、目の前のお客さんが何を求めているのかにも常に向き合う姿勢を忘れないようにしましょう。