ZMOTとは?購入や来店を決める真実の瞬間はいつ起こる?


Moment of Truthこれまで消費者の購買行動モデルAIDMAやAISASや、One to Oneマーケティングなど、消費者行動とそこへのアプローチの仕方などを見てきました。では実際に消費者が「これが欲しい!」と購入を決める瞬間はいつ起きるのでしょうか?
 

それを示すのがFMOT、SMOT、ZMOTという概念です。


 

これらは主に製品の購入シーンで説明されることが多いのですが、基本となる考え方は飲食店・サロン・クリニックなどサービスを提供するタイプのビジネスでも役立ちます。
ではそれぞれの概念がどのようなものであるのか、それらをどう捉えればよいかを見ていきましょう。
 

真実の瞬間はいつ起きる?

Moment of Truth

FMOT、SMOT、TMOT、ZMOTで共通しているMOTの部分は「Moment of Truth」の略で「真実の瞬間」を意味します。
この言葉がマーケーティング用語として最初に使われたのは、1990年に刊行された「真実の瞬間」というスカンジナビア航空CEOヤン・カールソン氏の著書です。
客室乗務員がお客さんに接する時間は平均して15秒ほどしかないそうですが、お客さんからまたこの飛行機に乗りたいと思ってもらうためには、この15秒の間に自社のサービスの質の良さを感じてもらい、同業他社との差別化を図らなければいけないという考え方です。
 

FMOTとSMOT

Moment of Truthの概念を元に2005年P&G社CEOのアラン・ラフリー氏が提唱したのが「FMOT(First Moment of Truth)」と「SMOT(Second Moment of Truth)」の2つで、自社製品を小売店で販売するインストアマーケーティングでの概念となります。
 

FMOTは「1度目の真実の瞬間」で、消費者が商品を目にして最初の3~7秒にその魅力を見定めるというものです。
店頭では同業他社製品と一緒に自社製品が並べられます。
その中で自社製品を手に取ってもらうためには、いかに自社製品を目立たせるか、アピールポイントを瞬時に消費者に伝えられるかが大事という考え方です。
 

SMOTは「2度目の真実の瞬間」で、商品を購入して実際に使用した際の体感が、次も購入するかどうかの決め手になるというものです。
自社製品のリピーターになってもらうためには、宣伝に力を入れるだけではなく、品質の良さが伴っていないといけないという考え方です。
 

TMOT

2006年に同じくP&Gのピート・ブラックショウ氏が提唱したのが、3度目の真実の瞬間を意味する「TMOT(Third Moment of Truth)」です。
ユーザーが商品のファンになって人に勧めることで、別のユーザーの購入につながるというものです。
 

こうしてP&G社は店頭でのプロモーションと顧客満足度向上に力を入れ、従来のマス広告に頼り切ったスタイルからの脱却に成功しました。
 

ZMOT

そしてインターネットの普及により2011年にGoogleが提唱した概念が「ZMOT(Zero Moment of Truth)」です。
FMOTで言うところの、自社が店頭でアピールする最初の3~7秒よりも以前に、すでに消費者は購入を決定しているという考え方です。
 

現在の消費者は、購入を検討している商品を事前に検索し、メーカーサイトや同業他社サイト、商品比較サイト、商品レビューや口コミ、SNSなど、様々な情報を比較してから購入を決めていますよね。
そのためこれまでのようなマス広告+店頭プロモーションだけでは不十分になってきてしまったのです。
 

真実の瞬間はどこで起きる?

以上のようにそれぞれの概念が生まれた経緯を見ていくと、インターネットの普及により今はZMOTで他はいらないのか、と思いがちなのですがそうではありません。
それらが起きる場所が変化しただけです。
むしろZMOTの中身が、オフラインからオンラインに場所を移したFMOT、SMOT、TMOTであるともいえます。
 

つまり消費者が最初に商品の存在に触れるのはウェブ上となったので、ここでFMOTとして他社との差別化を図らなければならなったこと。
SMOTの商品に対する良いイメージは、商品を使った瞬間だけでなく、メーカーの会員制サイトや公式SNSを通して、継続させることができるようになったこと。
SMOTで生まれる良い口コミ情報が、SNSや口コミサイトを通して拡散されることで、TMOTは顧客のリアルな知り合い以外にも広がるようになったこと。
この3つが合わさることで、店頭に来る前のゼロ状態の購入意思ZMOTとなるのです。
 

そしてこの流れは、サービスを提供するタイプのビジネスにも大きな影響を与える事になったのではないでしょうか。
昔はライバル店と少し距離をあけて、地域住人の目につく場所に店を出すだけで、一定のお客さんは来てくれたでしょうし、長く利用もしてもらえたと思います。
 

ですが今は情報サイトやGoogleのエリア検索などで、少し離れていたり普段通らない場所にあるライバル店も、一緒に比較されるようになりました。
あたかもスーパーの陳列棚に並べられている商品のようです。
そして代わりの店は簡単に見つかるので、お客さんがすぐ他の店に移ってしまいがちです。
 

ZMOTで考えるべきことは?

お客さんが初めての店に訪れる際「前を通って気になったからそのまま入ってみる」というよりも、「気になったから検索してみる」「事前にいい店がないか探してみる」といったケースが増えています。店舗の前に来た時にはすでにそこに入ることを決めている「ZMOT」ですね。
 

そうなるとまず最低限必要なのは、ウェブ上の公式ホームページや公式SNS、Googleマイビジネスや各種情報サイトに情報が載っているということです。
ウェブ上で情報がないと、ダンボール箱の中に入ったまま置いてあるだけで、陳列棚に並べられていない商品と同じような状態になってしまうためです。
周りのライバル店と戦うには、まずウェブ上の土俵に上がること、そこから自店の特徴やアピールポイントを発信して差別化を図ることが重要です。
 

でもネット上ではお客さんが情報を発信、拡散してくれるから、オーナーさん自身は何もしなくてもいいのでは?と感じるかもしれません。
それが良い効果を生んでいるうちはいいのですが、事実かどうかに関わらず悪いうわさが広がってしまう場合もあります。
自店として公式な情報を発信する場がないと、それらになすがままになってしまうため、やはり自らが情報を発信することは大事なのです。
 

そして来店してくれたお客さんに1人1人丁寧に対応することも、当たり前のようですが大事です。
昔は、忙しくてちょっと雑に対応してしまったとしても、常連さんが多く情報が広まる範囲も狭かったので、それほど大きな影響になりませんでした。
ですが今は1つの小さなミスからどれほど影響が出るかは計り知れません。
 

またウェブ上での情報発信が重要だからと誇張して良いことばかりを書きすぎると、来店したお客さんが落胆する度合いが大きくなってしまうので、常に等身大でいることも大事です。
そしてお客さん側も情報が豊富なので、こだわりを持っている店か、そうでない店かもすぐにバレてしまいます。
どんなに時代が変わっても、自らのビジネスに誇りを持って真摯に向き合うことが何より重要なのかもしれませんね。